プロジェクト詳細

草原真知子コレクション デジタルアーカイブ構築事業の概要と、 プロジェクトに携わるメンバーを紹介します。

草原真知子について

草原真知子は、早稲田大学名誉教授であり、メディア考古学における先駆的な研究者です。 メディアアートの黎明期から国内外で展示を企画し、キュレーターとして活動してきました。 光と影、そして機械的な運動が交差する文化領域を中心に研究を続け、 希少な幻燈機や初期映像機器、投影用のスライド、ジオラマ、影絵などの版画・印刷物、 そして明治から大正時代にかけての希少なモチーフの着物・古布を長年にわたり収集してきました。 本アーカイブは、草原真知子が数十年にわたり収集してきた貴重な一次資料群を デジタル化し、世界中の研究者が活用できるようオープンに公開することを目的としています。

事業概要

本プロジェクトは、文化庁の助成を受けて早稲田大学が進めている 「草原真知子コレクションのデジタルアーカイブ」構築事業です。 メディアアートの近現代史を専門とするアーキビストの指導のもと、 メディアアート研究の一線で活躍する有識者たちの助言を受けながら、 草原真知子コレクションの全容を測り、その目録と写真記録を作成し、 調査を行いながらメタデータを付与して、オープンライセンスのデジタルアーカイブとして 公開することを目指しています。

2024年2月、草原真知子が不慮の事故に遭われて以降、コミュニケーションを取ることが困難な状況が続いています。 以降、家族と関係者の間で、その学術的価値が非常に高いコレクションの散逸や劣化、 そして死蔵化を防ぐための協議が続けられてきました。 本事業は、こうした経緯を背景として始動したものです。

対象資料

有体物の総量は不明であり調査を続けていますが、 国内外の幻燈機(数十台)、投影用のスライド、ジオラマ、 影絵などの版画および印刷物(数百枚から数千枚)、 明治・大正期の着物・古布(数十枚)が含まれます。 また、メディアアート関連の研究書籍とVHS・DVD記録映像は段ボール46箱(総重量約700kg)を保管しています。

方法・体制

責任者のチェンおよびスタッフ3名によってデジタル化を行っています。 機材は学内備品を用い、性能上実施が難しいものについては外部業者に依頼しています。 メディアアートの近現代史を専門とするアーキビストの指導を適宜受けながら、 適切な仕様でのデジタル化を行い、将来的にメディア芸術データベースを含む 外部アーカイブズとの連携が図れるよう進めています。

初年度の実績と今後の計画

令和7年度の初年度では、草原真知子宅に簡易撮影ブースを設置し、 555点の一次資料の撮影とデータ整理を進めました。 資料の保存状態の記録、メタデータの作成も並行して行っています。

デジタルアーカイブのウェブ公開開始は2026年3月を予定しており、 全データが揃う完全版の公開は2027年3月を目指しています。 権利許諾を受けたデータの一部にはCC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ)ライセンスを付与し、 パブリックドメイン情報として公開します。 ウェブ公開の際はテキストの日英バイリンガル化を行い、海外での利活用も促進します。 将来的に本成果は書籍としてまとめ刊行することも目指しています。

社会的意義

草原コレクションは、メディアアートの前近代史と近現代史を架橋する研究の源泉となる 極めて貴重な資料群です。そのデジタルアーカイブを世界中のメディアアート・映像文化史研究者が 活用できるようオープンライセンスの下で提供することで、メディアアート研究の促進や 他ジャンルのクリエイターの制作支援、そして教育目的利用の推進にも貢献します。 オープンライセンスで公開することで柔軟な複製・共有を促すと同時に、 早稲田大学の演劇博物館のサーバー上にデータを格納することによって 長期的な公開体制を維持していく計画です。

プロジェクトメンバー

チェン ドミニク

チェン ドミニク

発酵メディア研究者
統括担当

博士(学際情報学、東京大学)。NTT InterCommunication Center研究員、株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、現在は早稲田大学文学学術院教授。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)Design/MediaArts専攻を卒業後、NPOクリエイティブ・コモンズ・ジャパン(現・コモンスフィア)を仲間と立ち上げ、自由なインターネット文化の醸成に努めてきた。近年では21_21 DESIGN SIGHT『トランスレーションズ展―「わかりあえなさ」をわかりあおう』(2020/2021)の展示ディレクター、グッドデザイン賞審査員(2016〜)を務めるほか、人と微生物が会話できる糠床発酵ロボット『Nukabot』の研究開発や、不特定多数の遺言の執筆プロセスを集めたインスタレーション『Last Words / TypeTrace』の制作など、国内外で展示を行いながら、テクノロジーと人間、そして自然存在の関係性を研究している。

橋本 典久

橋本 典久

プリミティブメディアアーティスト
撮影担当

映像の歴史や発展にともなう様々な装置に根ざした視点から、シンプルで力強い作品を制作。映像メディアに関するワークショップを多数行う。代表作に、「Panorama Ball」(1995年)、「超高解像度人間大昆虫写真[life-size]」(2003年)。越後妻有アートトリエンナーレ2006、「橋本典久の世界 虫めがねと地球儀」(2011年、ギャラリーエークワッド)、松戸アートピクニック(2017年)、越後妻有 大地の芸術祭 2022など展覧会多数。近年は19世紀の映像装置に関する研究とレプリカ制作も行う。日本映像学会映像玩具の科学研究会主宰。

zeroworks.jp →
松浦 昇

松浦 昇

資料整理担当

2011年東京藝術大学大学院映像研究科博士課程修了(映像メディア学)。2012〜15年同大学院教育研究助手。2015〜22年同大学院非常勤講師。2018〜19年ハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所客員研究員。2022〜25年東京藝術大学大学院映像研究科ゲスト講師。現在、東京藝術大学大学院映像研究科特任准教授、武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程、芸術文化学科非常勤講師。専門は近代日本視覚文化史。

明貫 紘子

明貫 紘子

キュレーター/アーキビスト
メタデータ作成担当

1976年石川県生まれ。筑波大学芸術専門学群総合造形コース、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)ラボ科卒業。ドナウ大学大学院(オーストリア)メディアアートヒストリー修了。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]学芸員を経て、「メディアアートの記録と保存」に関する研究やプロジェクトに従事。2013年から5年間 inter media art institute Duesseldorf(imai、ドイツ)の客員研究員として、ビデオアートのデジタル化とデータベース構築のプロジェクトに従事。帰国後、石川県加賀市を拠点にして映像ワークショップを設立。文化庁メディア芸術祭アート部門選考委員(2019〜2021年)。アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA審査員(2021年〜)。SIAFラボキュラトリアル・リサーチャー(2022年〜)。金沢美術工芸大学/京都精華大学非常勤講師。

山﨑 翔太

山﨑 翔太

補助担当

2002年東京都日野市生まれ。2025年学習院大学文学部哲学科卒業。現在、学習院大学大学院人文科学研究科身体表象文化学専攻在学中。19世紀の視覚文化、光学装置、アニメーションの前史を中心に研究を行っている。

有識者

Erkki Huhtamo

メディア考古学者(カリフォルニア大学ロサンゼルス校・UCLA)

細馬 宏通

人間行動研究者(早稲田大学)

コレクション所蔵者

草原真知子

1980年代前半からキュレーターとして展示、講演、執筆、教育を通じてメディアアートの発展と国際交流に尽力してきた。つくば科学万博、世界デザイン博覧会、21世紀★みらい体験博などの展示企画、東京都写真美術館およびNTTインターコミュニケーション・センター〔ICC]の開館準備、CGアーティストの自主団体Digital Imageの設立、『Computer Graphics Anthology』(文献社、1989)などの出版、IMAGINAやベルリン国際映画祭など海外での日本の作品の展示、アルス・エレクトロニカ・フェスティバルほか国内外の公募展の審査など活動は多岐にわたり、海外での講演、講義、出版も数多い。人工生命やデバイスアートなどメディアアートの分野や写し絵、幻燈など日本の映像文化史の論文は各国で大学教育に使われている。東京工芸大学、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、早稲田大学などで教育にあたり後進を育てた。早稲田大学名誉教授、博士(工学)。2021年、文化庁メディア芸術祭功労賞を受賞。

助成

文化庁 令和7年度
メディア芸術アーカイブ推進支援事業